観劇記録2017
「最近面白い芝居あった?」
こう聞かれる度にパッと出てこない。本当に。
せめてここ三か月くらいに見た芝居をさっと思い出せないものか。
単に記憶力の問題でもないだろう。
「体験」をいかに自分のものにするかはその瞬間の自分だけの責任ではない。
…というわけで今年見た作品をまとめます。
自分でもこんだけしか見てないんかいと辟易しそうですがそれもまたひとつの反省ということで。
個人的なその月の出来事もメモしながら。
1月
Twitterに「U25が使える最後の年なので予算と予定の管理をしっかりして、気になる公演を見逃すor手持ちがなくて行けないandそのためにカードを使って翌月つらくなり行けない状況を極力減らしたい。」と書いてあって半笑いになった。
・精華高等学校『大阪、ミナミの高校生』
友人に激オススメされて。この後すぐ作者オノマリコさんは岸田國士戯曲賞に『THE GAME OF POLYAMORY LIFE』にノミネートされましたが、個人的にはこちらの方が面白かったです。
高校演劇部を舞台にした物語と、役者の高校生たち各々の独白が交差しながら進み、どうしたら不幸が、呪いが断ち切られるのか幸福になれるのかを模索してゆく。
各々の独白は本当のことかは分からない。でも語られる貧困や家族の問題が、物語上の不幸と密接に絡みついていく。
物語に現実の問題を解決する力はないけれど、現実を諦めさせない力はあると感じた上演でした。
・子どもとおとながいっしょに楽しむ舞台 『音楽劇 アラビアンナイト』
2月
伊藤計劃にめちゃ影響受けてた。あとロシア映画ばっかり見てた。『キン・ザ・ザ』また映画館で観たいな。
・庭劇団ペニノ『ダークマスター』
話としてはホラーグロSF短編。恐ろしかったのは舞台美術かしら。
人間の目はピントを調節しているため、逆に画面に映る全てが緻密に描かれた絵は不気味に感じると何かで読んだことを思いだした。そんな美術。
・『熱海殺人事件』
熱海って実は初演文学座なんですよね。つか作品は戯曲の完成度がすごい。こんなに緻密かつエンタメの力を持つ作品、あまり出会ったことがない。
演出など作品の質には言及しませんが、若手俳優がつか作品に触れることで育っていってくれたらいいなあと思うのだけど…なあ…。
・TPAM『悪霊への道』『BALABALA』『ZERO ONE』ヌトミック『Saturday Balloon』
・YDC『Choreograph』『HOST』
・『なむはむだはむ』
・立教大学現代心理学部映像身体学科松田ゼミ卒業制作『麦秋』
・文学座『食いしん坊万歳!~正岡子規青春狂詩曲~』
3月
『ヨブ呼んでるよ』と『対話篇』を見た際に、「観て面白いものが見たい」という話をしていた。
原典がある作品はそことの関連部分を探っていくと面白さがあるのだが、そうでなくて作品として観て面白かった!と言えるものに出会いたいという話。
実験できる場は大事なのだが実験の先が大事。
・女の子には内緒『ささやきの彼方』
とある女性ちについての群像劇。演じ分けはあるものの、あれ?この話さっき聞いた?あれ?これは誰?となる瞬間がよかった。
死んだ女性と生きている女性が女優のからだに重なりながら、舞台の奥にひそむ大きな孤独がちらちら見えてくる感じ。
・『The Dark』
・日本のラジオ『ラクエンノミチ』『ボディ』
・鳥公園『ヨブ呼んでるよ』
・お布団『対話篇』
・マレビトの会『福島を上演する』試演会
・『生と性をめぐるささやかな冒険』〈女性編〉〈男性編〉発表会
・亜人間都市『声たちの在る』
・演劇で美術鑑賞『彫刻との対話から生まれた物語』
・ほりぶん『得て』
4月
・地点『忘れる日本人』
ついに地点が観客を舞台に上げた!とかなり衝撃の作品でした。
「地下室」を買って読もうと思って今の今まで買ってないことを思いだしたので帰京次第買います。
・ゲッコーパレード『ハムレット』
・ゆうめい『〆』
5月
自分の人生観の変わったNext Producers` Campがあった月。
この時から自分の人生の目的が何なのかを考え直すようになり、プライベートの優先度が増える。
・ローザス『ファーズ―Fase』
https://youtu.be/i36Qhn7NhoA
この動画が自分の中の体験として印象に残っていたので生で見られて感激だった。
動画のようなロケーションではなく素舞台だったのだがむしろストイックさ、一種の儀式性が増していた。
この作品は本当に面白い。まるで儀式のよう。足元に描かれる模様が先か、振付が先か。
このあたりから演劇の儀式性みたいなものを意識するようになった。
・『どちらがさきに口火をきったのか、もうわからない。vol.3』
6月
・こq『地底妖精』
2017年上半期ベスト。Qこれまで見られてないが、今まで描き続けた様々な女をろ過し続けた最後の一滴のような作品。
永山さんの取りつかれたような演技も印象的だった。
・シベリア少女鉄道『たとえば君がそれを愛と呼べば、僕はまたひとつ罪を犯す。』
・FUKAIPRODUCE羽衣『愛死に』
・サンプル『ブリッジ』
・チェルフィッチュ『部屋に流れる時間の旅』
・青年団『さよならだけが人生か』
7月
・シラカン『朝まして』
・ヤリナゲ『預言者Q太郎の一生』
・テニミュ関東立海東京公演
8月
・外の刺激+フランケンズ『不思議な学校 ロボット先生!』
・勅使河原三郎『月に吠える』
9月
・FUKAIPRODUCE羽衣『瞬間光年』
やっぱり羽衣はトチ狂っていて最高です。よくこんな役者集めたなあと感心しました。
・Q『妖精の問題』
見た後どうしようもなくしんどくなってしまった。再演するらしいが見に行く気になれない。
作品によって傷つけられたと感じた時、これも一種の言論であって傷ついたからといって作品を否定してはならない…
と思ったとして、でもじゃあこの傷ついた私はどこへ向かえばいいんだろう、ほんとうのポリティカルコレクトネスとは、こんなに自分の心を傷つけるものなのか?と悲しくなってしまった。
下ネタが苦手なわけでもなんでもなかったんですが。
・テニミュ関東立海凱旋公演
這ってでも行くという気持ちで無理やりスケジュールに入れた。入れて本当によかった。
・文学座アトリエの会『冒した者』
・F/T17『Toky Toki Saru』
10月
・F/T17『アイ・アム・ノット・フェミニスト!』『恋 の 骨 折 り 損 ― 空愛①場 ― 』『パレスチナ、イヤーゼロ』
11月
映画の方が見た気もする。
F/T終わった後に見た『ノクターナル・アニマルズ』が今年一番の映画でした。
・F/T17『Family Regained: The Picnic』『?利天』『GORILLA~人間とは何か~』
・ala Collection シリーズvol.10『坂の上の家』
・てがみ座『風紋』
・テニスコート『水をたくさん飲んできたので結構』
・岡崎藝術座『バルパライソの長い坂をくだる話』(リーディング公演)
・東葛スポーツ『ハウス』
12月
・どらま館ショーケース
『木星からの物体X』がめちゃ面白かったです。わっしょいハウスをずっと見られていなかったこともあり。
SF的視点が個人的に好みなのと、論点をこちらの思ってる一段上にスカッと抜かしてくるところが良かった。
本公演も楽しみ。ブログを読めていないのでちゃんとチェックしたい所存。
・シベリア少女鉄道『残雪の轍(わだち)/キャンディポップベリージャム!』
「これは演劇でやる意味はあるのだろうか?」と思う公演も世の中にはたくさんあるのですがシベリアはそういう意味ではずっと演劇しててほしいなと思う。
今回はちょっと仕掛けが無理やりな気もしたけどオチはやっぱり思わず拍手したくなっちゃうし、これからも見続けたいですね。
くだらないんですけどね。
・クリウィムバアニー『KれウィンバーNnイー』
・文学座附属演劇研究所『俳優についての逆説』
・文学座アトリエの会『鳩に水をやる』
・チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション
・演劇クエスト横濱パサージュ編
・青年団リンク キュイ『前世でも来世でも君は僕のことが嫌』
・立川シアタープロジェクトpresents 子どもとおとながいっしょに楽しむ舞台vol.2.『西遊記 ~悟空のぼうけん~』
・テニミュ比嘉東京公演(×2公演)
観劇納めがテニミュ。やったね。来年もテニミュだけは這ってでも見に行く。
というわけで今年観たのは全部で66作品でした。
個人的なベストはやはり、こq『地底妖精』でしょうか。
本数自体は仕事や経済状況と見合わせるとまあしょうがないかなという気もしますが、問題なのはやはりその作品についてすぐ言葉が出ないことですね。
こうして思い起こしていてもちゃんとしたこと書ける作品は片手で数えられるほどでしたので、来年はちゃんと観劇後にメモ程度でも書き記す。
何をそんな当たり前で初歩的なことを言っているんだという気もしますが、来年も精進いたします。